入選1位 質素な時計 しんどうまなぶ(精神障害) 入選2位 無題 村田 遼平(高次脳機能障害) 入選3位 秋から見つめて 新井純(直腸機能障害) 入選4位 笑顔でいる事を忘れない 井上麻貴(知的障害) 入選5位 わかってほしい事 吉田 沙緒里(統合失調感情障害) 題名:わかってほしい事 吉田 沙緒里(統合失調感情障害) 私はふつうじゃない なにかあるとすぐ泣いて物にあたる  わかってもらえないと自傷をする 幻聴もあってすぐ外にとびだす そんな私でも言葉の理解はできる でも周りから見ると おかしい きもちわるい  なんだこいつ きもちわるい いいかげんにしろよ そう思われてる気がする だからマイナスな考えがおおくて生きていたくない そう感じてしまう でも私を支えてくれてる人は何人もいる そういう人達を大切にしたい 題名:質素な時計 しんどうまなぶ(精神障害) 質素な幸せが 欲しいと思った 時計の針が ただ動いているかの様に 生きているんだなって 感じられたらいいな でも それには多くの想いが つめられているはず 時計の中の カラクリの様に 派手な時計や 電波時計でなくていい 飾らない 小さくて 時に誤差がある時計 当たり前の質素な幸せ そんな物を拾いながら 時を刻んでいきたい 題名:無題 渡辺奈美子(精神障害) きらいな カコが たくさんある 心が こわれそう 生きるの こわいよ でも そんな私に 優しく接してくれる人もいる そんな人たちを 大事にしながら 今を 生きてみたいな 題名:無題 村田 遼平(高次脳機能障害) 山が好き 自然が好き でも 私には交わることはできない だから 私は水になる 霧になる 題名:世界大戦 佐久本庸介(精神疾患) 勝手に作った片隅に 縮こまりながら思ってた 戦いたいと 自分に向けて、叫んでた 戦いたかった僕の生 戦いきれずに萎縮して 一方的に打ちのめされて 本当の隅に突き落とされた 戦えなかった悔しさと 戦えなかった憎しみを 戦えなかった人たちが ここで生きろと止めてくれた かつての敵は消え失せて 新たな生と現実が 三十路の僕の眼前に 戦火の如く燃え広がって 題名:そんなに頑張らなくていい 小林 孝江(精神障害) 人は忙しくなると頑張り過ぎちゃう 人は知らず知らずのうちに頑張り過ぎちゃう 人は疲れていても頑張り過ぎちゃう 人は周りの人が思っている以上に頑張り過ぎちゃう ちょっと待って…あなたは、頑張り過ぎちゃっていませんか? 頑張るってなんだろう? 頑張るっていいことがけど、頑張り過ぎちゃうのは良くない なにごとにも限界は、あるから 題名:お菓子の時間 市村未央(精神障害) 私の大好きな時間 お菓子作りの時間 バターと粉と 砂糖と卵 タルトの器を作ったら 何を詰めこもう フルーツ チョコレート チーズ スポンジケーキがふくらんだら いちごと生クリームを飾ろう ペタペタ ふんわり クリームを絞り 真っ赤な いちご シュークリームを 上手に作るには しっかり生地を練ること オーブンの中で シューが焼けたら 卵いっぱいの カスタードクリーム 最後は 紅茶と一緒に おいしい時間 題名:無題 高月静江(上肢機能 移動機能障害) もみじなら 犬猫鳴くよ わんわんにゃんにゃん すずみが鳴くとき 空の風 草のもみじも 枯れ葉なら 空の風さえ 夕雲と雲がおよぐよ すずめなら うぐいす一緒に 飛んだとて 犬猫鳴きあがる草さえ 緑のバラならば タンポポ咲くよ 貝ならば すずめが鳴くよ 麦の家 題名:水琴窟 宇佐美新一(腰部脊柱狭窄症) 遠い昔 そう 三十年以前 妻と二人で 京都に旅をし 老舗旅館に泊まったときである 風呂場に通ずる廊下の端に 水琴窟と銘打った場所があり そのかたわらに管状のものが置かれていた その管を耳にあて 真中の穴に付けるようにと 記されていた ものめずらしさも加わり その書き付けの通りにしてみると  これいかに 深い深い井戸の中に 水滴が一滴また一滴と落ちていき 何とも言えない神々しい音が耳に入ってきた 妻に声を掛けられるまで 放心状態でその音に聞き入っていた どんな仕掛けになっているのか分からなかったけれど・・・ 齢七十五才となった今 突然水琴窟の音がよみがえり あの頃を 懐かしく思い出す 題名:秋から見つめて 新井純(直腸機能障害) アルバム開けば 思い出が通ってきます 溶け出す思いに 涙が こぼれていきます 薄紅色のコスモスが 暖かみを 伝えています 独りぼっちになって しまいましたね 友達でもいいから いてくださいよ 私の支えになって くださいよ 言葉は 涙になっています 泣き出した 私が そこにいます 悲しみに 包まれています 手は 貴方を 離れています 繋ぎ直してくれますか 母の手のように 暖かいものをかんじています これが 心なんですね 秋から見つめてください そこには 二人の日々が かくされています 大切にしている 思いの 思い出があるんです もう 大丈夫ですね 書いていた悲しみは 幸せにかわりますね 嬉しい こんなに 嬉しい ありがとう 題名:水を下さい 中村優(知的障害) 恋の一滴 無駄にしないで 大河の一滴も 汗の一滴も エイチツーオーの特異性による 水の星地球に産まれた めぐりあいの神秘に 巡環(循環)する大空へ帰る雲間に 虹がかかるように 大自然の 大芸術家の筆は 生命(いのち)の水という 主の生命の樹の流れの中に 人間の心の奥底から わきあがる だれでも 無償で飲んでもよいように 人間個人と 大自然の呼応する時 鉱物にまで ビールスまで及び 悪人までも改心させて 老若男女を問わず 癒しという奇跡は 一杯のwaterから始まり 末期の水で次の世界へ入ってゆく 世界中の うえている子供達の 悲痛の叫びに 豊かで清く うまい命の水を与えたい 題名:笑顔でいる事を忘れない 井上麻貴(知的障害) 笑顔でいる事を忘れない 自分も笑顔なら 他の人も笑顔だから 時には悲しくなったり 怒ったりする時もあるだろう その時は 誰かに魔法をかけてもらって 私は魔法をかけられた分 相手に返す 笑顔は人に 幸せを与えてくれる だから ずーっと 笑っていたいんだ 笑顔は 一番の心のくすりだから 題名:君は君だよ 師走大安 君はいつも平気なふり 奥歯に力をいれて 口を真一文字にさせて 君はいつも平気なふり 誰に教わったんだい 我慢しなければいけないって 誰に教わったんだい 泣いちゃいけないって 怒っていいよ 泣いてもいいよ 強くて弱いそれが人間なんだ それが君なんだ 審査員からの講評 自然体が良い  竹内冬眠 第1回の試みとしては、両分野とも良質の作品に恵まれたといって良いのではないか。その意味で今後の2回以降が楽しみである。 ただ詩・川柳の応募の層はおおまかに言って、詩は書き馴れた人が多く、川柳はその多くのが初心者で、気軽に思いついたまま、心のままを作品化した感じが強い。  どちらの分野の応募者も肩肘張らずに自然体であるのに好感がもてた。 入選1位 質素な時計 しんどうまなぶ(精神障害) 竹内冬眠からの講評:一連「生きているんだな」 二連「時に誤差がある」 三連「当たり前の質素な幸せ」と文脉が「人」の生き方を見事に紡いている。 入選2位 無題 村田 遼平(高次脳機能障害) 評:終行に作者の感性の耀きと覚悟をみる。ただ題名をつけていないことで作品を貶めていないか。 入選3位 秋から見つめて 新井純(直腸機能障害) 評:「手は貴方を離れています/繋ぎ直してくれますか」の切ない訴求が、直接伝わってくる。 入選4位 笑顔でいる事を忘れない 井上麻貴(知的障害) 評:三連に作者の小さな優しさが感じられる。ただ全体的にやや理屈がかったものとなっている。 入選5位 わかってほしい事 吉田 沙緒里(統合失調感情障害) 評:「私はふつうじゃない」が終連にしっかり受け止められている。